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研究成果を発表いたしました

PLoS Pathog誌に論文が掲載されました。

 

Human T-cell leukemia virus type 1 infects multiple lineage hematopoietic cells in vivo.

『ヒトT細胞白血病ウイルス1型は多系統の造血系細胞に感染している』

Rie Furuta1,2, Jun-ichirou Yasunaga1, Michi Miura1, Kenji Sugata1, Akatsuki Saito3, Hirofumi Akari3, Takaharu Ueno4, Norihiro Takenouchi4, Jun-ichi Fujisawa4, Ki-Ryang Koh5, Yusuke Higuchi1,2, Mohamed Mahgoub1, Masakazu Shimizu6, Fumihiko Matsuda6, Anat Melamed7, Charles R. Bangham7, Masao Matsuoka1,2

(1京都大学ウイルス・再生医科学研究所ウイルス制御分野、熊本大学医学部血液・膠原病・感染症内科、京都大学霊長類研究所・人類進化モデル研究センター、関西医科大学 微生物学講座、JR大阪鉄道病院、京都大学大学院医学研究科附属ゲノム 医学センター、Section of Virology, Department of Medicine, Imperial College London)

PLOS Pathogens 13(11):e1006722. 2017.

 

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)やHTLV-1関連脊髄炎(HAM/TSP)の原因ウイルスであり、主にCD4陽性T細胞に感染して病態に関わることが知られています。HTLV-1の受容体はglucose transporter-1、neuropilin-1であり、CD4陽性T細胞以外にも単球やCD8陽性T細胞に感染できます。HTLV-1がCD4陽性T細胞を選択して感染しているのか、ウイルス遺伝子が感染細胞を特定の表現型に誘導するのかは、これまでわかっていませんでした。また骨髄に存在する造血幹細胞へのHTLV-1感染についてはこれまで一定の見解は得られておらず、本研究では造血幹細胞におけるHTLV-1感染の有無について評価を行いました。

HTLV-1の近縁ウイルスであるサルT細胞白血病ウイルス1型(STLV-1)に感染したニホンザルの臓器を用い、生体内でのウイルス遺伝子発現を確認しました。STLV-1ウイルス遺伝子taxとSBZ(STLV-1のHBZに相当します)の発現を測定すると、SBZは殆どの臓器で発現が見られたのに対して、taxは末梢血と骨髄での発現が高く、tax発現を認めない臓器も多く見られました。またSTLV-1感染ニホンザルの骨髄中で非T細胞にTax蛋白を発現していることも明らかとなりました。Taxはウイルス複製に必須であることから、造血幹細胞への感染の可能性が考えられました。

HTLV−1はヒトのDNAにランダムに組み込まれるため、組み込み部位の解析を行うことで感染細胞クローンを同定することが可能です。HAM/TSP患者さんの末梢血のT細胞、B細胞、単球、好中球を分離してウイルスの組み込み部位の解析を行うと、同一の組み込み部位が検出され、これらの結果から各細胞に分化する前の造血幹細胞へのHTLV-1感染が明らかとなりました。さらにHAM/TSP患者さんの好中球にウイルス蛋白であるTaxの発現を認めました。同患者さんの単球を分離して樹状細胞へ分化させると、HTLV-1の新規感染を誘導することも明らかとなりました。

これらの結果から、末梢でのT細胞へのHTLV-1感染と別に、造血幹細胞へ感染することで、HTLV-1感染造血幹細胞がウイルスの保持、伝播に重要な役割を果たしていることが明らかとなりました。ウイルス遺伝子が分化の際に感染細胞を特定の表現型の細胞へ誘導している可能性が示唆されました。

 

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